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私の心を震わせた浪曲。

  • 執筆者の写真: 勝千代 木村
    勝千代 木村
  • 2024年4月20日
  • 読了時間: 3分

更新日:2024年5月6日

 二葉百合子先生の歌謡浪曲「岸壁の母」は、まだ小学生だった私の心を大きく揺さぶり、とめどなく流れる涙とともに、私を浪曲の世界に引き摺り込みました。女流関東節最高峰の、二葉百合子先生。生まれて初めて、木馬亭に連れて行かれて、生の浪曲を聴き、「浪曲出来る人いませんか?」の問いかけにためらいなく手をあげ、連れて行かれた木馬亭の楽屋。今は、とても馴染みのあるその一室ですが、密室で二葉先生にご指導いただき、そのまま木馬亭の舞台へ…ここも、今は馴染みのある毎月踏んでいる舞台。その力強い節、ピーんと張ったぶれない声、コロコロ転がる節廻し。その節を聴いているうちに滂沱に流れる涙。

 その魅力に取り憑かれ忽ち覚えた一席に、涙を流しで聴いてくださる大人たちの前で、ただ呆然と立ち尽くし。「私にも出来ることがある」と震えた日。気がつけば、私は関東節の最長老である木村松太郎に弟子入りしていました。

 関東節を勉強して、師匠の前読みとして舞台にたち、師匠の舞台を間近に見て、演目を覚えて3年がたった頃でしょうか。当時の師匠の関係者に「女の子はやっぱり低調子が華がある」と、低調子の勉強をする事になりました。その時に聴いた浪曲が天津羽衣先生です。哀愁を帯びたその節に心が震え、その美しい節回しに酔いしれました。その日から、低調子も勉強を始めたある日の事、羽衣先生にお目にかかれる機会があったのです。丁度、浪曲大会の日だったと思いますが、楽屋に通され、羽衣節の勉強をしている事をお話してお許しいただきました。エレガントな羽衣先生との会話。夢の様な時間でした。当時、中学生でしたから、本当に昔の事で、それがどれくらいの時間だったのか、ぼんやりと思い出すのですが、お出番前の貴重なお時間に、お目にかかれ、その後、本番の舞台を間近で体験し、素晴らし過ぎました。あゝ。

 当時、松太郎師匠は、体調を崩されて入院したりと、小学生の頃の様に、ご自宅にお稽古に通えなくなっていたので、曲師の方においでいただき、お稽古をしていただいておりました。当時は、森谷初江お師匠さんや、東家栄子お師匠さんにお世話になる事が多かったですね。

 この女流二大巨頭の浪曲にガツンとやられた私は、浪曲の沼にハマっていったのです。そんな訳で、中学生の頃、高校生の頃は、低調子で舞台に上がる事も多かったです。大谷さんばりの二刀流‼️うふ。ですから、高校一年生の時に出演した寺山修司さんの追悼公演「青森県のせむし男」では、芝居の狂言まわしを浪曲で進めるのですが、コレは低調子で節付けしております。ト書きの中に、「桃中軒雲右衛門の節で」とあり、当時の私は「ももなかけん?」となっていたくらいでしたが、結果オーライ。ちなみに、桃中軒雲右衛門先生は、ウチの師匠である木村松太郎の師匠の、木村重松の師匠であり、私も曾孫弟子という関係。ですから、今思えばとってもご縁を感じるご依頼でもありました。

 初めて一から節付けする体感は、何か体から湧き上がる感情を節に表現する感じてもありました。演出の鈴木完一郎先生は、浪曲を聴いて「色んな声が出るんだね」と仰ってました。劇中浪曲なので、普段の浪曲とはまた異なる節付けではありましたが、これが皆んなで作って行くって事なんだなぁって感動しました。

 隔月で行われている独演会にて、この「羽衣節が聴きたい!」と、異例の申し出があり、私の原点であるこの浪曲を皆様にお聴きいただく機会を得て、懐かしさと、また嬉しさでいっぱいであります。5/19(土)アートスペース兜座午後2時開演です。勝千代の原点がわかる今回の会も激レアです。お待ちしてます!

 
 
 

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