8月が来る度に。
- 勝千代 木村
- 2022年8月18日
- 読了時間: 2分
私が、初めて戦争というものを知ったのは、浪曲です。二葉百合子先生の熱唱「岸壁の母」。そして、これを聴かなければ、浪曲師にはならなかったであろうと言う浪曲との衝撃の出会い。さらに、天津羽衣先生の「原爆の母」で、原爆という事実を知ります。知らない事は、全て浪曲が教えてくれた。学校の教科者よりも先に、そして、もっと人の心の奥深くにまで入り込む様に。
私が、一冊の絵本、「まっ黒なおべんとう」(児玉辰春作)に出会った衝撃も、同様でした。「いつか、この話を浪曲で伝えたい」そう心に誓った日。浪曲の舞台に復帰した夏、初めて舞台に掛けてから、毎年、8月が来る度に口演させていただいております。只、昨年だけは掛けられませんでした。コロナ禍による中止。そして、コロナ禍による心の辛さから、どうしても演ずる事が出来ませんでした。
ところが、今年になり、木馬亭の楽屋で、「これ、原爆の話なんです」と、若手の天中軒すみれちゃんに言われ、「え?」となりまして。戦時下への広島にタイムスリップするお話との事。新しい切口ですなぁ!「若い自分がやる事に意味がある」と感じているそうです。では、平和寄席などで一緒にやります?と言う運びになりました。また、若手の富士実子さんも、浪曲「まっ黒なおべんとう」を初めて聴いてくれた時から、やはり平和への思い広島への思いを、伝えてくれていて、「平和寄席やりましょう!」と言う運びとなりました。戦後世代の我々が、浪曲で語る戦時下の物語。皆様に、どんな形で平和へのバトンが繋げるでしょうか。以前、NHKラジオFM放送「浪曲十八番」で放送いただいた時、「辛い時代だった。でも、君が伝えてくれるから、私も頑張らなければ」という恩師の言葉を受け、或いはお客様から、「今日は広島に思いを馳せた」と言う言葉をいただき、語り続けようと思うのです。
実子さんからの提案で、トークありの会となっております。夏の終わりに、戦後世代の浪曲師が紡ぐ平和寄席。どうぞ、ご来場お待ちしてます。

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